「荒木飛呂彦の漫画術」からの学びまとめ
学びを記しておくシリーズの第二弾。
漫画家になりたい訳でもなく、ジョジョも17巻くらいで止まってしまっているものの
独自の世界観を構築するジョジョの作者が基礎とする方法論に、興味がわいた。
溢れる情熱と深い考察に基づいた方法論
広分野の研究を通じて獲得した普遍的な方法論が惜しげもなく披露されている本書。
終始、漫画や、本書読者への愛情のある荒木さんの言葉に満ちており、
成熟したプロフェッショナルさを、とてつもない読みやすさとともに感じさせるもので
自分の中で、尊敬する芸術家の一人として強く刻まれるキッカケとなった。
漫画を最高芸術と評することに対しても本書を通じて強く賛同の意を覚えた。
芸術・表現を志す人には、そこから生み出されるものを一層高める為に是非とも一読してほしい。
漫画家を志した人でなくとも分かるような平易な表現で丁寧に、リアリティを持って伝えてくださっている、素晴しい書。
注意点として、あくまで「王道」を示して基礎構築を促すもので、
王道も然り、また、王道を理解した上で、派生系や、逆ばりの作品にも挑戦し、
漫画の世界を拡げてほしいという願いが込められている。
方法論の基礎
キャラクター・ストーリー・世界観・テーマを基本4大構造として
それを絵を通じて表現することが漫画。
制作活動の上では、「テーマ」が本人の信念とリンクすること、
確固とした「キャラクター」や「世界観」を練り上げる事が大切と説かれている。
以下、特に印象的だった考え方がいくつかあったので、
その点について引用に、部分的に意訳も込めて書き留める。
※ 厳密な表現内容については、原文を参照されたい。
1ページ目をめくらせるための工夫
- 1ページ目はその後の展開の予告。
- 5W1Hが伝わる絵から始める事で、前提や世界観をそろえて場面を開始できるという意味で効果的。
- 状況説明をしすぎない。台詞や態度から察してもらうような粋な演出を心がける。
- 個人的に、CMなどでの表現にも活かし得る考え方だと感じた。
キャラクターが自然に紡ぐストーリー
- 身上調査書を各登場キャラクターに対して、事前に密に書き上げておく事でそこに事件や解決すべき課題を投入することで、自然とストーリーが仕上がっていく、キャラクター達が物語を自然と紡ぎだす。
- プラス面もマイナス面も描く。偽善的でない / リアリティのある内容にするため。
- 特徴を並べたら、「ああ、あのキャラクターね」って言ってもらえる水準が理想。
- キャラクターの動機は重要な要素。世界観にひたってもらうためにも、根源的な欲求を含めた、納得感があり、興味深いものを選択する必要がある。中でも「勇気」が共感を呼ぶ。
- ヒーローは孤独。困難を唯一解決する力を持つ存在が故に、必然的に孤独になる。
- 脇役は、その欠点を克服するような展開とともに成長を描く。
起承転結のすすめ
- 起 : 役者が出そろう
- 承 : 事件発生
- 転 : 事件が激化 / 深刻化 / 展開
- 結 : ハッピーエンド
- 日々、起承転結の枠組みで捉える訓練を行なうべし。
プラス方向への展開のすすめ
- ストーリー展開として、マイナスには方向付けない。プラスの選択肢が増えたり、何かを進める為に何かを犠牲にしたりは許容するとして、単にストーリーを凹ますことはしない。
シンボル化とリアル化
- シンボル化 : 明確な特徴付けを行なう事で、認識してもらいやすくする。印象づけやすくする。
- リアル化 : 精緻に描写することで、その空間、時代、世界観に現実味をもたせる。
- 両者をバランスとりつつ、場面を見極めつつ、組み入れる事がポイント。
読者が漫画に求めるもの
- 世界観に浸りたい
- 特定の登場キャラクターに会いたい
- ストーリーを楽しみたい
以上、今後の自分の表現活動においてもとてもためになる名著のレポートでした。
荒木さんの今後の活動についても、これまでの作品についても
今更ながら改めて注目させて頂きます。